サウルの息子

「サウルの息子」を観た。

ハンガリー映画。力作。カンヌ映画祭のパルム・ドールは逃したが、グランプリは受賞。アカデミー賞でも外国語映画賞を受賞。

最初、昔のアナログTVのような4:3近いスタンダードサイズで驚く。
わざとこうやってる、つまり演出なんだよね…?と戸惑いつつ観る。主人公サウルにめちゃくちゃ寄ったようなカメラワークで、サウルの周りで起こっていることがとても伝わりづらい。後方視点なんだけど寄り過ぎてて主観とあまり変わらない構図。周りで何が起きているのかわかりづらい演出が、とにかく主人公を取り巻く状況の不安さを際立たせている。

とにかく見づらいが、その演出は非常に効果的。

ゾンダーコマンドの話。ゾンダーコマンドのことはこの映画を観るまで知らなかった。ナチス支配下でユダヤ人たちがガス室送りになって大量殺害が行われていた背景で、こき使われた人々の話だ。ガス室で大量に死んでいる遺体を運び出し、処理し、清掃していく日常。書いてるだけでも気が狂いそうな凄惨な日常である。

主人公サウルはガス室でガスを浴びても絶命せず虫の息になってる少年を見つけ、自分の息子だと思い込む。サウルの息子というわけだ。で、その少年はほどなく死んでしまうのだが、ちゃんと弔ってやりたいと奔走する。「シンドラーのリスト」でもそうだが、上官の気分ひとつで簡単に射殺されるような状況のなか、サウルは何とかして弔いの儀式を執り行うべくあっちへ行ったりこっちへ行ったりするのだ。実に危なっかしい。

しかし戦後70年経っているわけだ。もう一人の人生が丸ごと収まるくらいの年月が経っているのだが、それでもこういった作品が生まれる。しかもこれまでにない手法と表現で。それって凄いなと映画の可能性に驚くとともに、観るのは相当の覚悟が必要だなと感じなくもない。

「シンドラーのリスト」のときも思ったが、撮影現場ではどれくらいの狂気を抑制して進められたのだろうかと思う。モラルが求められるのだ。
とにかく凄い作品。観る人をがっつり選ぶ。観るならちゃんと姿勢を正して。

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