せっかくの休日なのに、普通に目が覚めてしまった。もうちょっと寝るかとも考えたが、俺はそういうことができない。「あー起きた・・・何時?」とか考えてる時間でパッと目が覚めてしまう。

うーむ。起きてしまった。どうするか。
とりあえず、いつものように冷たいお茶を飲む。そうしながら「今日は何をするんだったかなあ。何かやらなきゃいけないこと、あったかなあ・・・」と考えはじめた。

「えーと、明日は、えー明日はサッカーを観たいんだよな。そうでなくて今日は・・・えーと、ホームページのデザインを変更したかったんだよな。でも今日でなくてもいいんだよな。バイト先でのホームページ作成の課題は、えー・・・ほとんど終わってるよな。FIREWORKSの勉強でもするか・・・? でもそれもなあ」

いいかげんお茶が無くなってきた。どうするか・・・

「じゃあ、迷走でもするか?」
しかし迷走ってもなあ。どこか迷いそうなとこ、行ってみたいとこ・・・うーむ。

しばらく考えて、別に迷う必要はないよなあと思った。迷うために知らないとこに行くなんて、何だか危ない人じゃないか。
どっか行きたいところ、という基準で考えて目的地が決まった。

「八幡山に行こう」

今の大塚に引っ越してきて一年になるが、その前は八幡山に二年住んでいたのだ。その引っ越す原因になったのが「アパートを取り壊す」というものだった。八幡山から引っ越して、それからそのアパートがどうなったのか、見に行くことはなかったのだ。

「よし、八幡山っていうのは具合のいい距離だ。あのアパートがどうなったのか見に行こう」

さらに頭の中で閃くものがあった。
「そうだ! ついでに近くの天下一品でラーメンを食べよう!」

やにわに興奮してきた。俺は天下一品のラーメンが結構好きだ。そこを昼食とするという目的をたてた時点で、早く行きたくてたまらなくなった。

「よおおし、とりあえず八幡山だ。それから後はその時考えよう!」

2分後にはチャリンコ「ペケペケ号サード」に乗っていた。

まずは新大塚へ。不忍通りから目白通りへ。そして目白駅を通り過ぎる。
ここまでは何回か来てる。ここで山手通りに入る。南下。

しばらくして予想通り甲州街道に来た。笹塚かと思ったが初台だった。
「よしよし、このまま道沿いに西に向かえば八幡山だ」

すると桜上水。「あー懐かしい」京王線は最終が桜上水止まりだったと思う。何回かここから歩いて帰ったなあ。

すぐに上北沢。ここも隣駅だし、あと上北沢区民センターがあって練習場の予約に来ることもあって馴染み深いところだ。

懐かしい気分で八幡山に。天下一品はもうすぐ開店する様子だ。
「待っているんだよ・・・」

やがて前のアパートに。新しい住居になっていた。アパートのようだが一階・二階とも一部屋ずつのようだ。
「あー、前トイレだったところが入り口になってる。そうか。こんな風になったんだ・・・」

しばらく眺めたのち、その場を離れた。

そしてラーメンを食い、満足感を味わったあと、お冷を飲みながらどうするか考えた。
「東西南北、どっちに行くかだな・・・」
東なら道を引き返すことになる。西だと遠ざかる。これは却下だな。
北と南か。・・・北だと高井戸だ。さらに行くと荻窪か。しかしなあ、何回かではあるけれど行ったことあるし。

南に行くことにした。甲州街道と環八が交わるちょっと南にドンキホーテがあるのだが、そこから南には行ったことがないからだ。

「多分そのうち小田急線にぶつかるだろう。そこから東に向かって帰るという感じかな・・・」

かくして環八をひたすら南下する。ドンキホーテを過ぎると、人影がなくなった。道は広く、車がたくさん。街路樹がワサワサと続く。

「どっかで見た風景だなあ」と考えてると「あーそうか。つくばの風景だ」
そこはつくばでいう「西大通り」にそっくりであった。

そんなこと考えてたら不意に便意を催してきた。やばいと思って、しかしコンビニとかないのでしょうがなくガソリンスタンドに飛び込み「すいませんトイレ貸してください!」と叫んだ。

さてしばらく進むと横断歩道の無い交差点に来た。向こう側に渡れない。「えーどうすんだ?」見ると歩行者用陸橋が。行けない。

「もう直進はいいや」と思って左に曲がる。すると見事に迷った。どこなんだここは。
電柱に貼ってある看板によると用賀らしい。・・・だから用賀ってのはどこだ!

うろうろしてるうちに地図を見つける。「とにかく、この用賀を抜けよう」そして地図を見る。すると・・・

近くに多摩川があるらしい。「何・・・多摩川・・・? 東京都のはしっこ・・・多摩川・・・」

多摩川に行くことにした。
割と道なりに進むと橋が。「いよいよだ」そして多摩川を越える。軽い興奮。
「おおお・・・俺は今、多摩川を越えているのだ。・・・チャリンコで。なんということだろう」

そして左に曲がる。せっかくだから引き返さずに、隣の橋から戻ろうというわけだ。

川の匂いのせいか、実に気分がよい。明らかに空気が違う。見るとバーベキューをする人たち、野球をする人たち、ゴルフをする人たち・・・
「おおー、ここはいいとこだなあ! こういうところに住みたいなあ!」

そんな気持ちを抑えきれず、ニヤニヤしながら多摩川沿いを疾走する。

しかしいつまでたっても隣の橋に近づかない。
「どうなってるんだ」
見た目よりも随分遠くにあるようだ。段々疲れてきた。
「いつまで走らせるつもりなんだ!」

ヘトヘトになって橋を渡る。そして進む方向に上り坂が見えて、「あー行きたくねえ」と横道に入る。
するとまた迷った。

田園調布だとはわかったが、聞いたことあるだけで知らない。かなり疲れてきたので一度停止して一服することにした。
そこを「地方から遊びに来た風カップル一組」が通り過ぎ、小声で「このへんに住んでんのかな。すげー・・・」とヒソヒソと話していく。
「違う、違うんですよ。僕はここで道に迷っているのですよ・・・」と言いたいが、こっちは疲れてるのだ。

やみくもに、適当に走り続ける。大きい通りに出た。
「環八通り」

どうなってるんだろう。俺はどこにいるのだろう。どっちを向いているのだろう。

そこの風景は見たことがない。つまり正しい方向に行ければいいのだが、間違った方向に進むと元に戻ってしまうのだろう。

賭けで、右に行くことにした。結果的には正しかった。
やがて中原通りに交わる。ここを左に行けば五反田らしい。

「五反田は・・・山手線だっけ・・・山手線の南の方だよな。でもそっちに行くしかないよなあ」

五反田目指して北上する。ここでMP3プレーヤーの電池が切れた。コンビニに入り、電池と煙草を買う。

冷静に考えた。天気が不安定だから、いつ雨が降ってもおかしくない。こんなところでウロウロして夕立にあったら最悪だ。今はなるべく早く帰れるルートを見つけなくては。
五反田から渋谷へ何とか着いて、明治通りを行くことも考えられるがそれは遠回りだろうと思った。なので電話ボックスに入り、タウンページで地図を確認する。

五反田から六本木、そこから江戸川橋までストレートに北上するルートを見つけ、その進路、すなわち道路の名前と交差点の名前と目印を頭に叩き込む。

ガシガシ進む。不思議と疲れてない。疲れを通り越した。
六本木で信号待ちしていると、道を尋ねられる。なぜだ! どうして俺に道を聞くのだ!

神宮外苑のあたりでは警備の人たちのキビシイ目つきを振り払い、何とか江戸川橋まで辿りつく。

やっと大塚まで帰ってきた。
疲れた。ここまで疲れたのは初めてだったんじゃないのか。

日に焼けたっつうんだ。
でも、多摩川よかったなあ。住みたいなあ。

第3回迷走地図

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