ブラック・ミラー 第3シーズンを観終わった

「ブラック・ミラー」第3シーズンを観終わった。

これまでの第1シーズン第2シーズンと異なり、本シーズンはNetflix製作・配信となっている。
第1シーズンも第2シーズンも相当に面白かった。なかでも第2シーズンの後の特別編といった感じの「ホワイト・クリスマス」は非常に質の高い脚本と演出だった。第3シーズンは全6話とボリュームアップしたが、各話独立しているのはこれまで通り。

全体的な感想としては、正直パワーダウンしたと感じた。各話はしっかりした作りであるし他のドラマと比べればクオリティは高い。しかし第1シーズン#1から#3、第2シーズン#1と#4(これが「ホワイト・クリスマス」とカウント)という傑作と同じ水準には到達してなかったと思う。観る側の期待値がめちゃくちゃ高くなってしまっていた。
でも普通に考えればクオリティ高いドラマですよ。Netflixを観るならば、これは必ず観たほうがいいというドラマです。

第3シーズン第1話「ランク社会」

ブライス・ダラス・ハワード主演。監督はジョー・ライト(「プライドと偏見」「つぐない」「路上のソリスト」「ハンナ」など)、共同脚本にラシダ・ジョーンズ、音楽はマックス・リヒター(「戦場でワルツを」「パーフェクト・センス」「ディス/コネクト」「ラスト・デイズ・オン・マーズ」「コングレス未来学会議」など)という、実は凄すぎる布陣だ。
共演に「スター・トレック イントゥ・ダークネス」「ラビリンス 抜け出せないふたり」の眼光鋭いアリス・イヴ。

SNS社会の行き着く形といった状況。何かことあるごとにお互いに評価を送り合い、すべてランク化され可視化されている。ちょっとでも相手を不快にさせてしまえば悪い評価を送られ、自分のステータスが下がる。ステータスが低いと同僚であっても仲間外れにされる。一般的なサービスをまともに受けられなくなる。
ブライス・ダラス・ハワードは自身の評価をあげるために汲々とする毎日。事情があって引越しせざるを得なくて、いい物件に住むためにランクをあげる必要がある。そこへ古い友人(こいつがとてもランク高い)の結婚式でスピーチしてくれないかという依頼があり、ここで一発決めれば出席者から高評価をもらえて一気にランクアップできると目論んだが…という話。

まずブライス・ダラス・ハワードの体型が…なんだあれは。役作りじゃないよな? 「ジュラシック・ワールド」の後なんだけどどうしちゃったのかという状態だった。
すべてがランク社会であるというコンセプトは悪くないと思うが、後半はステータスが落ちたブライス・ダラス・ハワードがいかにして結婚式まで辿り着くか(飛行機に乗れなくなってヒッチハイクするとか)のドタバタになっており、ここが「ブラック・ミラー」っぽくないなあと思った。システムからドロップアウトする恐怖というのは「ブラック・ミラー」におけるよくある切り口だが、そこでの焦燥感とかジワジワ感を丁寧にやればいいのにと思った。
まあとにかくブライス・ダラス・ハワードですよ! まったく…

第3シーズン第2話「拡張現実ゲーム」

監督はダン・トラクテンバーグという人で、ゲーム「Portal」を元にした「Portal: No Escape」という短編を撮った後に「10 クローバーフィールド・レーン」の監督に抜擢された。音楽はベアー・マクリアリーという人で、ゲーム系やテレビ界での活躍が多く、代表作は「ウォーキング・デッド」。「10 クローバーフィールド・レーン」も担当。山村憲之介という色んな映画に出演している俳優が出演している。

母を置いて放浪の旅に出た主人公青年。旅先で彼女が出来て短期アルバイトを探して、とある治験のような仕事の口を得る。
日本人クリエイターがトップを務めるゲーム会社で、そこでの新しい作品のモニターとして参加するといったものだ。誓約書にサインしていざ始まる実験は、VRの領域を超えたゲームのなかで半端ない恐怖が襲ってくるというものだった…という話。

タイトルが拡張現実ゲームということなのでARやVRを想像させるけれども、いま実現できている程度のものではないテクノロジー前提になっている。要は視覚とか聴覚とかを誤認させるレベルじゃなくて、脳に直接くる。「トータル・リコール」みたいな。「ペイチェック 消された記憶」みたいな。
そう考えると、実はこのギミックに新味はないのである。観終わってみると「ブラック・ミラー」のエピソードのうち印象の薄いものとなっていた。凄い恐怖体験をするんだけど、実際にはそれは1秒足らずのうちに起こっている。まあそりゃそうでしょうね…
終わり方も「未来世紀ブラジル」みたいな感じ。そうだろうな…

第3シーズン第3話「秘密」

監督はジェームズ・ワトキンスという人で「ディセント2」「処刑・ドット・コム」で脚本、「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」で監督をしている人。

主人公の若者はバイト先でやや大人に馴染めなくって、でも客の子供の忘れ物を笑顔で渡してあげる心優しい系。妹に勝手にPCを使われてウイルスに感染して駆除のためのソフトをダウンロードして実行する。実はその駆除ソフトがマルウェアだった。PCカメラを通じて行動が筒抜けとなり、ポルノをみてあの行為をしたことを撮影されてしまう。脅迫され、謎の犯人に従うしかない主人公。そして…という話。

まあ、謎の犯罪組織みたいなのが得たい知れない感じです。従うしかない男たちは同じ理由で脅迫されている。同情するしかないが、脅迫内容の具体的な指示はきわめて謎めいている。最後のほうまで結末が読めずにスリリングであるものの、突然「ファイト・クラブ」みたいになって誰得なんだという展開だった。最後の犯人側の「ざまあww」的な終わり方は後味悪いけれども、主人公の若者がみたポルノにも捻りがあったため、どうにも…な終わり方。
展開は良い感じったけど、「ブラック・ミラー」的なエピソードかっていうとどうだろうなあ。

第3シーズン第4話「サン・ジュニペロ」

音楽はなんとクリント・マンセル(「月に囚われた男」「レクイエム・フォー・ドリーム」「レスラー」「ブラック・スワン」ほか多数)なのである。
マッケンジー・デイヴィス(「オデッセイ」の後にブレードランナー最新作に出演らしい)とググ・バサ=ロー(「砂上の法廷」のサポート役の人。スター・ウォーズのエピソード8でヒロイン抜擢の可能性高いらしい)の物語。
ハッピーエンドではあるが、「ブラック・ミラー」ぽいなと思える作品だった。

80年代。若者が集まる場所にて何だか馴染めないマッケンジー・デイヴィス。人生を謳歌するググ・バサ=ローとひょんなことから意気投合する。お互いに惹かれ合うものの…という話。
冒頭でなんで80年代なんだと思わされるし、その後に時代が飛ぶところで意味がわからなくなるが、次第にこの世界のルールがわかってくる。「ブラック・ミラー」のシリーズらしく、細かい説明をしない。でも理解できて、なるほどなるほどと面白くなってくる。
この世界で過ごすのかどうするのかみたいな選択肢があって、観てる側にはあまり選択の余地ないんじゃないかなーと思いつつも、登場人物たちは悩み葛藤して、結論を出す。
で、やっぱりそうなってほしかったハッピーエンド。いい終わり方。
基本的にダークな世界観の「ブラック・ミラー」には当てはまらないかのようなエピソードだが、面白かったと思う。たまにはこういうのも良いなと思った。何よりクリント・マンセルですからね。

第3シーズン第5話「虫けら掃討作戦」

音楽はポーティスヘッドのジェフ・バーロウとベン・ソールズベリー(「エクス・マキナ」など)である。途中で消える出演者にサラ・スヌーク(「プリデスティネーション」「ジェサベル」など)がいて驚く。こんなところで。

主人公の兵士Malachi Kirbyを含む部隊は国中に潜伏している「虫けら」を殲滅することを目的に動いている。途中でわかるが「虫けら」とはゾンビっぽい仕上がりの造形で、なんでそういうことになっているのかは説明されない。「虫けら」を撲滅しないとどうなるのかもわからない。が、人々は「虫けら」を忌み嫌い、兵士たちは遠慮なく殺す。奴らは人じゃないので。
ところがある日、Malachi Kirbyが殺そうとした虫けらが小さなペンライトのようなものを持っていて、その緑色の光を目にしてから、Malachi Kirbyの視覚に異常が起こるようになる。実は…という話。

ま、こういうことだろうなと思っていたら、果たしてそうだった。読みやすいストーリーだった。
恐ろしいテクノロジーだが、根本的に似たようなことは常日頃行われているといえる。人間は錯覚を起こしやすい生き物であるし、ダン・アリエリー曰く「自分が自分で決めたと思っていることは、実は大半はそうではなくて誰かに操られているのだ」ということなのだ。

最後のほう、あんなにドラマティックにしなくてもいいのにと思った。やや綺麗にまとめようとしすぎてる感じがあった。
もっと突き放した感じだと「ブラック・ミラー」っぽいと思う。

第3シーズン第6話「殺意の追跡」

シリーズ最終話だからか、本作だけ長めの尺となっている。
出演はケリー・マクドナルド(「トレインスポッティング」「ゴスフォード・パーク」「エレクトリック・ミスト 霧の捜査線」など)、フェイ・マーセイ、ベネディクト・ウォンなど。

全体的な雰囲気や謎めいた展開は上質だと思った。ミツバチが絶滅して、代替として自律ドローンのAI蜂が投入される。この蜂は巣を作って、なんと自己を複製していくのでどんどん増えていく。でもセンサネットワーク化されている。すごいテクノロジー。
そんな社会でSNSで炎上したあるライターが殺される事件が起こった。その事件を追う刑事。やがて恐ろしくとんでもない事態になって…という話。
先にも書いたが、なんていうかデヴィッド・フィンチャーの映画だと言われてもそんなものかと思えるくらい、冒頭からの雰囲気がしっかりしている。こりゃ映画だよなあと思いながら観た。

ネタは早々に割れるので、途中からはミステリーというよりサスペンスになる。しかも炎上に加担した投稿者たちが相当の数いたっていうラストも、まあそうなるだろうなっていうオチだったし。もはや皮肉とかのレベルじゃないので「ブラック・ミラー」らしくないかもだが、自動で運転される車のギミックなど、本筋と関係ないところにテクノロジーのディティールが凝りまくっているのが非常に良かった。こういうのが観たかったのである、と。

第3シーズンは最初に書いたように全体からすると第1、第2シーズンには及ばない感じではあるが、各作品の質は基本的に高い。また、テクノロジーの進化が物語の根幹となっていない(テクノロジーが進化しても人間の行動がさほど変わらない)ところもコンセプトはぶれていなくて、楽しめた。
第4シーズンの製作が決まっているそうで、それも楽しみだ。